So-net無料ブログ作成

(考察)健康オイルは石鹸に良い? [├ 用語・材料・化学っぽいこと]

いろんな健康オイルが売られています。
わざわざ新品のそれで手作り石鹸を作ろうという人は少ないと思いますが、廃油石鹸なら意図的、またはうっかり入ることもありえます。
そこで、「健康油で手作り石鹸」についてちょっと考えてみます。
【2006年10月現在の商品について、各社が製品紹介サイトで公表している情報を元にしています。何か新しい情報等あれば、修正するかもしれません。】
※10/10 リセッタの組成などついて、修正しました。

長文注意ですよ!

(前提、言葉の意味)
こういうことを意識して読んでもらうと分かりやすいと思うので、念のため書いておきます。
※なぜ健康にいいかは、各製品のサイト等でみてね。

1)いわゆる石鹸原料の油脂って?
= トリアシルグリセロール、トリアシルグリセリド、トリグリセリド= 1分子のグリセリンに3分子の脂肪酸がエステル結合したもの
1分子のグリセリンに2分子の脂肪酸しか付いていないものをジアシルグリセロール(ジグリセリド)、1分子しか付いていないものをモノアシルグリセロール(モノグリセリド)という。
一般的な食用油ではほとんどがトリグリセリド。ジ、モノ体は多くて数%程である。
下はいい加減な図。本当はグリセリンのどの位置が空くかは決まっていません。ナミナミ部分の長さもさまざまです。

いい加減な図
トリグリセリド
ジグリセリド
モノグリセリド

2)石鹸に使われる脂肪酸の種類
脂肪酸にはいろいろ種類があるが、溶解性、泡立ち、洗浄力、固さなどの面から、炭素数でC12(ラウリン酸)~C18(ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸)のもので作られることが多い。
手作り石鹸で使われる動植物油脂の脂肪酸構成も大半がこの範囲に入り、C12より小さいもの、C18より大きいものは微量か、特徴的に含有する油脂があるだけである。

---------------
■■体に脂肪がつきにくい(1):ジアシルグリセロール■■
花王の健康エコナクッキングオイル(製品サイト)

トリグリセリドが2割、ジグリセリドが8割というもの。
ベースが大豆油、菜種油とのことなので、脂肪酸はC18オレイン酸、リノール酸が中心。
ジグリセリドが多いため、普通の油脂よりも鹸化価が小さく、グリセリンの生成量が多くなります(下表参照)。
鹸化価が小さいということは、同じ重さのオイルからできる石けん分(分子の数)が少ないということです。それに対してグリセリンが多めにできること、またリノール酸が多いと考えられるため、固まりにくいかやわらかい石けんになるでしょう。

●結論
とりあえず、洗浄力のある石けん成分は得られそう。
一般のサラダ油より鹸化価が小さいので、鹸化率100%で作るときには過剰アルカリになりすぎないよう注意。ブレンド廃油であっても、どの程度入っているか把握できているのが望ましい。
ジグリセリドは水分になじみやすいので、トレースは速い(超速といううわさも)。
やわやわ石鹸覚悟で。ジェルソープやお洗濯向きかも。

仮に、脂肪酸が全部C18オレイン酸、鹸化率100%とした場合の計算(リノール酸でもほとんど変わりません)
「8割がジアシルグリセロール」の8割が、モル基準か重量基準か不明のため、モルと仮定。
仮定が多くて精度は自信ないので、正確な鹸化価はメーカーに聞いてね。

概算値(100%鹸化、平均C18)
トリグリセリド
(比較用)
鹸化価(NaOH換算) 135mg/g
石けん分生成量 90%
グリセリン生成量 10%
グリセリン/石けん 11%
80%ジグリセリド
(エコナ)
鹸化価(NaOH換算) 130mg/g
石けん分生成量 87%
グリセリン生成量 13%
グリセリン/石けん 15%


※石鹸成分、グリセリンの生成量とは、「油脂+苛性ソーダの重量」に対して計算しています。水分は含みません。

---------------
■■体に脂肪がつきにくい(2):中鎖脂肪酸■■
日清オイリオのヘルシーリセッタ (製品サイト)

中鎖脂肪酸(C8カプリル酸、C10カプリン酸)を含むトリグリセリド。ベースは菜種油。
中鎖脂肪酸はココナッツ油、パーム核油に少量含まれます。肌刺激性があるともいわれています。キャリアオイルである分留ヤシ油は主にこれらを多く含むオイルのため、グリセリドでいる分には問題ないが、遊離酸やナトリウム塩になると刺激性がでるということでしょうか。適当な資料を発見できていません。
中鎖脂肪酸の石鹸は洗浄力がなく、恐らく長鎖のものより遊離しやすいため、独特の不快な臭いを発することがあるかもしれません。

ラベルの表記によると、14g中の中鎖脂肪酸(関係成分)は1.6gとのこと。関係成分ってのがよく分かりませんが、アシル基として1.6gと考えると構成脂肪酸のうち、モルで13%くらいが中鎖脂肪酸ということになりそうです。この場合、鹸化価はNaOH換算で145mg/g前後となりますが、定義がよく分からないので精度はめちゃめちゃ低いです。

中鎖脂肪酸を含む
トリグリセリドの
イメージ

●結論
洗浄力が小さく安定性や肌刺激性からも心配な中鎖脂肪酸を多く含む、またベースが菜種油のため、積極的に石鹸向きというオイルではない。
廃油に少々混ざっている程度なら問題ないが、単独で石鹸にするのはちょっと考え物。
中鎖脂肪酸エステルは加水分解されやすいため、トレースは早まる傾向にあると予想。

---------------
■■コレステロールを下げる:植物ステロール■■
日清オイリオのヘルシーコレステ (製品サイト)
AJINOMOTO(J-オイルミルズ)の健康サララ (製品サイト)
花王の健康エコナ ヘルシー&ヘルシークッキングオイル (製品サイト)

植物ステロールという成分を多めに含有。
これは不鹸化物の多い油という扱いで、ベースになっているオイルの特性に従って石鹸にすることができます。
ヘルシーコレステは米油、菜種油ブレンド、健康サララは大豆油。
健康エコナ ヘルシー&・・・は、ベースが上述のジアシルグリセロールのため、注意が必要です。
植物ステロールは単独で化粧品用乳化剤としても使われるようです。したがってこれもトレースを早める傾向にあるでしょう。
---------------

はー。
ついに図まで作っちゃいましたね。もったいないので以降機会があれば活用します。
このために「脂肪酸組成を入れると鹸化価を計算するエクセルシート」なんてのも作ってしまいましたが、こっちはもう活用の方法が思いつかない。(脂肪酸組成調べるより鹸化価問い合わせるほうが簡単と思う)。

-------------------------
■□BBS□■にも遊びに来てね。


nice!(1)  コメント(9)  トラックバック(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 1

コメント 9

しろみ

ゆりくまさんの知識の広さと研究魂に天晴れ!(脱帽です^^)
健康系オイルは良くわからないから敬遠していたのですが、
これですっきりしました♪
ゆりくまさんに「石けんのオイル」本を書いて欲しいなぁ・・・宣伝部長を買って出ますよ!
by しろみ (2006-10-08 07:11) 

O嬢

すごーい!化学者みたい!!!
ゆりくまさんって、ナニモノなの???
石けんのオイルの本を出版することになったら、絶対買いますヨ。
すごいな、すごいな。ホントにすごいな♪
by O嬢 (2006-10-08 10:55) 

モコ

あえて、健康オイルで石けん作りを~
とは思ったことなかったですけど、
今、ちょ~ど、メインに出来そうなオリーブとか米とか
その辺のオイルを切らしていて、あるのが健康オイル。

これでも、作れるかも~・・・って思っていた矢先。
無駄にオイルを使うところでした。
とっても参考になりました~^^/~
by モコ (2006-10-08 10:58) 

ion

はー! そいういことか〜!
よく、トレースが早い・遅い、などあるのも、ちゃんと根拠があってのことなんですね。今まで化学的な視点で見られていなかったから、経験的にしかわからなかったけど。
例えば、トレースの遅い椿油100%などにエコナを少量プラスして鹸化を早めるとかの利用もできるってことですね!

この前、教育テレビの高校の化学で「油脂と石鹸」をやってました。(合成洗剤も作ってたので、興味深かったです。)そもそも、エステルがよくわかんないので、検索してきまーす♪(高校で石鹸作らなかったです。。。)
by ion (2006-10-08 22:58) 

ゆりくま

▼みなさんこんばんは~
残念ながら、上の話は全部想像です。すべてのオイルを石けんにしてみる体力がないので根拠のある本を作るなんてことは難しそうですよ~。
■しろみさん
○○油で石けんできますか?!って人いそうだなぁと思って。
そう思い始めるとなんか調べときたくなっちゃうんです。詳細をメーカーに聞くまでには至らないので想像ですが。「鹸化価教えてください」って、昼間に電話しないといけないのがネックですね。

■O嬢さん
>ゆりくまさんって、ナニモノなの???
石けんとはまったく関係ない、バリバリ合成系の化学メーカーに勤務するおばさんです。最近技術系の仕事はしていないので鈍ってます。

■モコさん
やばそうなほうの健康オイルでしたか?
お役に立ててよかったです。
お値段も高いし、新鮮なのをメインのオイルにする価値はないと思いますよ。
元はキャノーラや大豆のサラダ油ですしね。

■ionさん
そうですね、水と親和性の高い成分(アルコール、ジグリ、モノグリ、何かの不鹸化物)で乳化が促進されたり、苛性ソーダと反応して発熱するもの(何かの不鹸化物や乳製品など)、すぐ反応する遊離酸(バージンココナッツ油とかに多い)があると、鹸化に加速がかかるということでしょう。
どの程度のエコナ添加で効果あるか分からないですが、もっと確実な方法は、何かシンプルレシピの石けん欠片をパーム油温めるときに混ぜて溶かし込んでおくことだと思います。乳化早まりそうでしょ?

私も、高校で実験はまったくやってないのです。詰め込み方の進学校だったからかな。有機化学は大っ嫌いだったしね(会社入って激しく反省)。教育テレビ、いいなー。夜中にやってるやつですか?
エステルとは。。。アルコールの水酸基(-OH)と酸のカルボキシル基(-COOH)が脱水縮合したもの。。って、こういうのは案外ウィキペディアが分かりやすいですよ。
by ゆりくま (2006-10-08 23:59) 

toakon

うおおお。健康エコナで石けんできるのか、できないのか?ずーっと気になっていたのですっごいありがたい考察です。うちのオイルポットにためつつある廃油も半分が健康エコナ、残りはごま油とサラダ油と紅花油の混合ってかんじなので、いつか実験してみたいと思います。花王とサラダ油のメーカーに配合率と鹸化率こんど質問してみよう(果たして教えてくれるかしら?)。
by toakon (2006-10-09 14:14) 

ゆりくま

■toakonさん
鹸化価(またはエステル価)は、油の品質にかかわる数値なので、メーカーはロットごとに把握しているはずです。上手に聞けば教えてもらえるはず。
脂肪酸組成は多分教えてもらえないです。特にこういう特殊な油は難しいんじゃないかな。
花王に、エコナで石鹸できますか? ってストレートに聞いた話はどこかで読みました。
もしいい情報があったら教えてくださいね~。
by ゆりくま (2006-10-09 15:15) 

シナモンみそロール

ゆりくまさん、初めまして。
遅レスですが、私は健康エコナで石鹸を作ったことがあります。
taoさんのサイトで3年くらい前に書き込んだ方がいて、鹸化価をメーカーに問い合わせてその結果を書かれていたのです。でも今は削除(?)されたのか、検索しても出てきません。
そのときの書き込みでは鹸化価は183~185とのことでした。
さて、健康エコナでつくった石鹸は、新品の油でも廃油でも驚くくらい水分を溜め込んでくれます。水分を減らして、2ヶ月以上経っても、半透明でぶよぶよ(ゴムの塊のような感触)とした手触りには驚きです。
ちなみに私は健康エコナの廃油(100%)と水酸化ナトリウムでリキッドソープもつくりました。泡立ちも比較的良いです。
by シナモンみそロール (2006-10-14 10:50) 

ゆりくま

■シナモンみそロール さん、こんにちは。はじめまして。
情報ありがとうございます。
上の記事の概算だと、KOH相当の鹸化価(本来の値)は182mg/gになるので、ほぼ合ってるということですね。よかったよかった。
石けん成分に対するグリセリンの量が数%多いことで、そんなに固さが変わってくるのですね。本当に、石けんの製法や配合というのは長い歴史の中で最適化されてきたものなのだなと感じます。
by ゆりくま (2006-10-14 14:39) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

手作り石けん講座案内
手作り石けん講座案内
HandmadeSoapくまま FBページ HandmadeSoapくまま クリックよろしくお願いします
クリック応援ありがとうございます