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ミョウバンと苛性ソーダ、石けん [├ 用語・材料・化学っぽいこと]

コメントでミョウバンを石けんに入れることについてご質問をいただきました。

ミョウバンについては過去にTaoさんのBBSに書き込んだこともあるのですが、TaoさんのサイトはBBSも含めてまもなく閉鎖されてしまうので、そちらに書いたことも見直しつつ改めてこちらで記事にしてご質問の回答とさせていただきます。

その前に・・・ web検索などでここへ来られた方が無駄な時間を使われるのも申し訳ないのではじめに書いておきます。

これは「ミョウバン石けんの作り方」の記事ではありません。
個人的にはコールドプロセスの手作り石けんにデオドラントの目的でミョウバンを入れることには賛同しません。
製作途中、最終的な石けん水、どの段階で加えてもミョウバンはアルカリと反応して全く別の物質に変化し、ミョウバンとしてのいろいろな機能は失われます。石けんで体臭の元になる汚れをよく洗浄したあと、ミョウバン水やボディーパウダーとして使われるほうがはるかに効果的ではないかと思います。
・ミョウバンによる体臭予防法 http://www.wakiga.jpn.org/oldlog2/lg0316.html
このリンク先にミョウバンが体臭を抑える効果と作用の機構について説明があります。水溶液が「酸性であること」が重要なようです。アルカリ性の石鹸と酸性のミョウバンの組み合わせがよい効果をもたらすかどうかはよく考えてみてください。以下の記事は考えるための参考にはなるかもしれません


■まず一般的な話

ミョウバンとはある単一の物質のことではなく、ある特徴を持った化合物(1価の陽イオンの硫酸塩と3価の金属イオンの硫酸塩の複塩)の総称です。

薬局や食品売り場などで簡単に手に入る焼ミョウバンはカリミョウバン(硫酸アルミニウムカリウムの無水物[AlK(SO4)2])で、漬物用のほうは焼アンモニウムミョウバン(硫酸アンモニウム・アルミニウムの無水物[AlNH4(SO4)2])のこともあります。品質表示を見ればどちらかわかります。

両化合物の性質などはこちらに詳しく説明があります。
(大明化学工業株式会社) http://www.taimei-chem.co.jp/product/06.html

ミョウバンは水に溶かすと加水分解して弱酸性を呈します。
アルカリ性の水溶液と混ぜ合わさると、水酸化物イオンとアルミニウムイオンが組み合わさって水に溶けにくい水酸化アルミニウムを生成します。

化学の教科書では以下のような実験が定番です。
ミョウバン水に水酸化ナトリウム水溶液を滴下していくと水に溶けにくい水酸化アルミニウム[Al(OH)3]のゲル状沈殿が生成します。
ところが更に水酸化ナトリウムを滴下し続けてアルカリが過剰になると水酸化アルミニウムはテトラヒドロキソアルミン酸ナトリウム Na[Al(OH)4] を形成して溶解します。(Na+ と [Al(OH)4]- に電離した状態で溶解)

弱アルカリ性の石けん水にミョウバンを加えてもやはり水酸化アルミニウムの白色の沈殿ができるそうです。


■質問と回答

[状況]
・加齢臭対策として焼きミョウバンを苛性ソーダ水溶液に粉末のまま投入しました。
・猛烈な反応(反応熱+反応ガスが出てきました)が起きましたが、通常通り石鹸を作りました。
(223gの蒸留水に102.4gの苛性ソーダを溶解、溶解水温度55℃で15.4gの焼きミョウバン投入。
反応時にジュワジュワとあぶくが出る。水温も約20℃上昇)

[推察]
大過剰の苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)水溶液に焼ミョウバンを溶かしたため、上述の水酸化アルミニウムを経由してテトラヒドロキソアルミン酸ナトリウムができる反応が一気に起こったと考えられます。
最終生成物である Na[Al(OH)4] の分子式を見てわかるように、アルミン酸イオン[Al(OH)4]- の中はAl:OH =1:4 で、大元の焼ミョウバンまでさかのぼると AlK(SO4)2 の1モルに対してNaOHは4モル必要です。
分子量で考えれば AlK(SO4)2:4NaOH = 258 :160(=40×4) となり、質問者さんが投入した焼ミョウバン15.4gは約9.6gの苛性ソーダを消費したと推定されます。


[質問1-1] 出てきたガスは水素と思われるのですが、引火爆発問題の有無は?

ミョウバンと苛性ソーダの反応なら水素は発生しないと思うのですが。
粉末を投入したために焼ミョウバンの溶解熱(水和熱)と中和熱が局所的・瞬間的に発生して水蒸気が出たのではないでしょうか。

苛性ソーダ水溶液に直接金属アルミニウムを溶解させると上述のアルミン酸ナトリウムができる反応の過程で水素を発生します。
可能性は低いと思いますが仮にこれに似たような状況で水素が発生したとして・・・ 発生するかもしれない水素ガスは約0.2g、純品で2~3リットルくらいでしょうか。ガス発生口のすぐ傍に着火源(火種)があれば火がつくかもしれませんが、少量なので換気のよいところであれば短時間で拡散して引火の心配はなくなるでしょう。

※※(追記)※※質問者の方はガスの臭いに触れていないのでカリミョウバンを使ったと勝手に解釈しました。アンモニウムミョウバンの場合はアンモニアガスが発生する可能性があります。強烈な刺激臭があるので気がつかないはずはないかと思いますが・・・。 ちなみに水素は無色無臭です ※※(追記終)※※

[質問1-2] 苛性ソーダ水に焼きミョウバンを入れたので多少の反応で済んだように考えますが、苛性ソーダ粉末と焼きミョウバン粉末を其のまま混合すると怖い問題が発生するのでしょうか?

水が手助けしないと上のような反応は起こりません。もし完璧に脱湿された環境で混合して保管するなら何の問題も起こらないでしょう。しかし普通の環境では、特に苛性ソーダは簡単に大気中の水分を吸収して液状化する性質があるため、粉のまま混合すると危険です。混ぜた直後はなんともなくても吸湿に伴って反応がおこります。水溶液のように発生する熱を吸収する余分な水がないため非常に高温になり、発煙や容器の破損につながる可能性が高いと考えます。


[質問2] 元の苛性ソーダ水溶液のpHが低下しているので、何グラムの苛性ソーダを追加すれば元の水溶液のpHになるのでしょうか?

上の推察に書いた通りで、消費されたNaOHは約9.6gです。(pHというより反応量論で考えます)


[質問3] この石鹸は通常の手作り石鹸として使用することは問題ないと考えていますが?

苛性ソーダの1割近くが消費されてしまっているのでディスカウントがはじめの設計値プラス10%になっています。
かなり高ディスカウントになっていそうですが、それなりに石けんとして使える可能性は高いですね。

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文字ばっかりですいません・・・
質問1-1のガスの正体はもうちょっと調べさせてください。

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菌ちゃん

おはようございます!
非常に良い勉強させて頂いております。
家で漬物を作ったことがなく デオドラントを意識したことがないので ミョウバンという物質を知らないのですが 何だか化学反応が怖そうですね。
アルカリ性の中で 効果を発揮出来るものなら良いですが 逆効果になる場合もあるので 気をつけなければですね…。
ゆりくまさんの この化学っぽいシリーズ 好きなんです~。(笑)
毎回惜しみなく情報提供して下さり ホントに感謝でいっぱいです。
ありがと~!
by 菌ちゃん (2009-10-30 07:35) 

ちょこちょこ

用語・材料・化学っぽいこと・・・の記事がだ~いすきです(*^_^*)
せっけんに入れると良いもの、入れるべきじゃないもの、理由がしっかりわかって納得出来ます。
混ぜるだけ~の作業は誰にでもできますが、化学反応だと言うことを忘れてはいけないことを再認識しました。
今回も読み応えありました♪ありがとうございますm(_ _)m
by ちょこちょこ (2009-10-30 17:43) 

ゆりくま

▼菌ちゃんさん、ちょこちょこさん、こんにちは。

ミョウバンを使う時はたいてい化学反応させるのが目的ですが、普通に使う範囲ではそんなに過激な反応は起こらないので大丈夫ですよ。
漬物以外だとベーキングパウダーにも入っているし、媒染剤、防臭制汗剤など大変便利なものです。
苛性ソーダと混ぜる実験は高校化学?中学くらいでもやるんじゃないかな?(希薄な水溶液でやってね)

苛性ソーダのほうはご存知のように非常に反応性が高く、相手によっては危険なガスを発生させることも少なくないので、苛性ソーダの水溶液に直接何かを混ぜようというときは事前によく調べるほうがよいですね。

このカテゴリはなかなかネタを見つけ出すのが難しいです。
次がいつになるかわかりませんが。。。 気長にお待ちください。

by ゆりくま (2009-10-31 20:07) 

上海Uです

質問をさせて頂きながらご回答御礼が大変遅くなり誠に申し訳有りませんでした。
加齢臭にミョウバン石鹸は効果なしと言うことでガッカリしています。
未だ熟成中の石鹸なので使い勝手がどうなるか楽しみなのですが、モールドから石鹸を出した時点でとても柔らかい石鹸だったことから大変不安を持っていました。
しかし原因は鹸化率の低下だったのだと理由がはっきり理解できました。
以前ワンちゃん石鹸を鹸化率80%で作りましたが、溶けやすいということ以外は問題ありませんでしたので何とか使えると思います。
又、科学薬品の混合時はよくよく調査した後で行動しないと失敗することも理解できました。
専門的な、又大変詳しいご説明を頂戴しよく理解できました。
ありがとうございました。

又、菌ちゃんやちょこちょこさんもコメント欄に出ているのですね。
上海Uがこんな質問をしているんだということがバレテしまい多少赤面状態です。
しかし、真剣に加齢臭対策石鹸にチャレンジしていたということだけはご理解願います。
by 上海Uです (2009-11-12 18:01) 

ゆりくま

■上海Uさん

なるべく客観的に書こうとは思っているのですが、否定的な内容になってしまって申し訳ありません。
文中にも書きましたが、よい石けんでしっかり洗った後にミョウバンスプレーやボディパウダーを使われるのがいいと思います。ネットで大々的に広告している某ミョウバン石けん(1社しかないようです)もスプレーとの併用を強く推奨していますし(笑)

石けん本体とオプションがお互いの機能を損ないあわない範囲でいろいろなものを入れて楽しむのは手作りせっけんの魅力ですし、オプションの効能を信じる心にも効果はあると思っています。
上海Uさんの石けん作りが楽しいものでありますように。
また遊びにきてくださいませ。
by ゆりくま (2009-11-15 00:06) 

上海Uです

ミョウバン石鹸では詳細なご説明を戴きありがとうございました。
解禁日は過ぎたのですがなかなか使ってみる気が起きず、やっと1週間前に卸しました。
ご指摘の通り苛性ソーダが10%余計にディスカウントされた石鹸でした。
油っぽいという印象であり、溶けやすさも大きくなっています。
ただし、乾燥期なので冬用石鹸としては中々な使用感には成っているのですが、泡立ちが悪いということになるかもしれませんが、泡が非常に細かい泡であり、クリームぽい泡になりました。余り好きな泡では有りません。
鹸化率と泡立ちとは関係ないと思っているのですが、ミョウバンの成分中の何かが悪さしているのでしょうか?と思っています。
もう二度とミョウバンには近づかないつもりです。
詳細なご説明を頂戴したお礼に以下のレシピを添付しました。
プレゼント用石鹸をラッピングする時に中に入れているものです。
色つき成分表なのですが、コピーしたら色抜けしました。
No3 カメリアソープ 茶花肥皂 09/
成 分 中国語名 産地 比率
つばき油 Camellia 茶花油 日本 50%
ココナッツ油 Coconut 椰子油 菲律濱 27%
シアバターShea Butter 乳木果油 荷蘭 13%
パーム油 Palm         珀姆油 印尼 5%
天然蜜蝋 Bee Wax 天然蜂蜡 中国 4%
ひまし油 Castor 蓖麻油 巴西 1%
"蒸留水・NaOH Distilled water sodium hydroxide
"            蒸溜水氢氧化钠 中国

上記レシピは何時も作っている石鹸です。本来的には泡立ちが良い石鹸になるはずでした。
by 上海Uです (2009-12-18 09:52) 

ゆりくま

■上海Uさん

でもちゃんと使えるようでよかったですね。
ディスカウントされた分だけ「不純物=汚れ」が多くなっているわけですから、石けんの界面活性作用がより多く汚れの取り込みに使われて気泡力(まだ汚れを捕まえていない石けん成分が泡に寄与する)が落ちたのでしょう。

いろいろ入れてみるのも手作りせっけんの楽しみのうちですから、あまりめげずにこれからも挑戦続けてください!
by ゆりくま (2009-12-19 22:54) 

上海Uです

夜遅くの時間に励ましのお言葉を頂戴しありがとうございます。
気泡力の説明よくわかりました。
石鹸内部に汚れ成分が多いから気泡力が落ちる。理解できました。
石鹸の泡とは何ぞや?とじっくり考えたことも無く、石鹸なんだから泡が立つと思っている辺りは素人ですね。反省しました。
界面活性剤の短分子膜が泡でしたね。汚れが多ければ短分子膜は破壊される。だから気泡しないと言うことですね。
科学的な事、事件が起きたら又相談に載ってください。
宜しくお願い致します。
by 上海Uです (2009-12-22 14:15) 

ゆりくま

■上海Uさん
22時なんて、夜はこれから~って時間ですよん♪
今年が上海Uさんの石けん作りによい年でありますように
by ゆりくま (2010-01-03 21:10) 

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