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ティンクチャーとウルトラ抽出 [├ インフューズドオイル]

先日ウルトラ抽出についての質問メールをいただきました。
ご質問者の方にはすでに回答済みですが、同じような疑問をお持ちの方もおられるかもしれませんので要約して再掲します。
参考になれば幸いです。

緑茶石けん
2007年作 緑茶ウルトラ抽出オイルの石けん


■質問要旨

フィトケミカルの抽出に無水エタノールを使うと余計な脂溶性成分が抽出されるのでウォッカなどを使うほうがよいと聞いた。ウルトラ抽出では無水エタノールをつかうが、ウォッカではダメなのか。

■回答

当ブログでも紹介しているウルトラ抽出は「インフューズドオイルを作る方法」です。
無水あるいは95%エタノールに抽出した成分をオイルに移すため、脂溶性成分のみならず、オイルだけでは抽出しにくい水溶性の高い成分も抽出することができます。

ウォッカを抽出に使うのは一般的に「ティンクチャー(チンキ剤)を作る方法」です。
25~75%位のエタノール水溶液を抽出に用います。水溶性、脂溶性の成分が適度に抽出できます。

ティンクチャー、ウルトラ抽出ともに脂溶性、水溶性の成分を抽出できるというメリットがありますが、異なるのはその抽出液の使用目的です。

ティンクチャーは希釈して化粧水や乳液の水側の基材にするなど、「水」をベースにした使い方をします。(海外ではそのまま服用がメインかも)

もともと水分の多いウォッカなどで抽出したティンクチャーと比べて、無水エタノールの抽出物には多くの脂溶性成分が含まれているため、水で希釈するとワックス類、顔料化した色素成分など水には溶けない成分が顕著に析出・沈殿してしまうことがあります。したがって無水エタノール抽出物を水ベースの化粧品に用いるのは好ましくありません。質問中の「余計な脂溶性成分」というのはこのような析出物になりやすい成分の事を言われているのかもしれません。

インフューズドオイルはその名の通り「オイル(油)」なので、そのまま塗布したり軟膏やクリームの油性基材に用います。

そもそも脂溶性の成分を活用するための抽出方法、使用方法ですから、たくさんの脂溶性成分が溶け込んでくるのは大歓迎です。
オイルに直接抽出するためには温度や時間が必要ですが、やはり脂溶性成分を溶解しやすく素材にしみこみやすい無水エタノールを媒介させるウルトラ抽出なら短時間で効率よく進めることができます。


ウォッカをウルトラ抽出の媒介に使う事はあまりお勧めできません。
初めから水を存在させてしまうことでウォッカへの脂溶性の成分の抽出効率が落ちます。
また素材に水がしみこんでしまうため、そこにオイルを注いでもオイルが素材に入り込むことができず、残っている脂溶性成分も取り出すことも難しくなります。乳化作用のある成分によって濁りが出たり、水溶性の成分がオイルに溶け込みきれなくなったスカムが浮いたりするかもしれません。
ウルトラ抽出はあくまで「インフューズドオイルを作る方法」なので水を介させないほうがいろいろ面倒が無くてよいのではないかと思います。
(現実にはウォッカでもそこそこできるだろうと思いますが、あれば無水のほうが効果的でしょう。)


(2010.7.6 マニアックな追記)
■ウルトラ抽出で抽出される成分「脂溶性の成分に加え、水溶性の高い成分も抽出されます」の補足
「水溶性の成分が抽出される」という風に考えておられる方も多いと思いますが、ほとんどオイルに溶けないような成分はやはり抽出されないし、若干エタノールについてきたとしてもエタノールを飛ばし終わったところで不溶化してしまうでしょう。
「油にもそこそこ溶けるけど、水のほうが大好きなので油には出てきてくれにくい成分」を引っ張り出すくらいに考えておくのが無難です。


■ 「平衡」について
いささか専門的な話になりますが、抽出操作は「平衡」「分配」という現象に支配されます。
私は職業柄 頭では理解していますが短く説明できないので、まずは こちら(コトバンク :平衡)こちら(ウィキペディア : 分配係数)の「概要」の冒頭数行を読んでください(それ以降は無視してよいです)。
ある成分Aを接触で抽出しようとする時には必ず平衡の支配を受け、S相(個体相)に存在するA成分をO相(油相)へ100%移動させることは不可能です。ウル抽ではエタノールを介させることで平衡をずらし、より多くのAをO相へ 移動させます。しかしここでW相(水相)が存在し、かつA成分の親水性が強い場合、エタノールによってS相から抜き出されたA成分はO相よりW相にひきつけられてしまい、結局O相にはほとんど存在しないことになります。

つまり・・・はっきり言うと、
「本当に水溶性の高い成分もほしいならウル抽でウォッカ使わないほうがいいよ。使うとオイルに出てくる水溶性成分はかえって少なくなっちゃうよ。」ということ。
理由は「平衡」なんだけど上手に説明できなくて追記前の文章ではあいまいにしてしまいました。 ごめんなさい。
水まできれいに蒸散させられれば溶解可能な分はオイル側に戻ってくるけど、面倒ですよね。

--------------------追記終


ウルトラ抽出の方法などは以下の記事を参考にしてください

ウルトラ抽出のまとめと失敗事例 その1 (方法まとめ)
ウルトラ抽出のまとめと失敗事例 その2 (失敗事例)

元祖?ウルトラ抽出法 (はじめてやったみたときの記事)


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コメント 2

かなで

おぉぉ。
なんとも判りやすい説明ありがとうございます!
ウル抽、ずーっと気になってたんですが周りに石鹸教室や質問できるような人がいなくてずっと悶々としてました(笑)
いつもながら判りやすい説明に感謝です~♪

by かなで (2010-05-29 13:23) 

ゆりくま

■かなでさん
整理されていなくて恐縮ですが、少しでもお役に立てれば幸いです。
ウルトラ抽出、アルコールをしっかり飛ばすことだけ心がければ後は難しいことはありません。ぜひトライしてみてください♪
by ゆりくま (2010-05-30 22:45) 

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