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KOHの純度 [├ 用語・材料・化学っぽいこと]


△はちみつのような色艶とろみ。実はブレンドしたナトカリ石鹸です。


最近はカリ石鹸やらナトカリやらでジェル状の石けんばかり作っているゆりくまです。

ホットプロセスは張り付いていなければいけない間は少し面倒だけど、結果が出るのが早いのがいいところです。
実験やお遊び向き。

そんなわけで苛性カリ(水酸化ナトリウム、KOH)をよく使っているのですが、ちょっと気になっていることがありました。

それは、ディスカウントしないレシピのカリ石鹸が必ずアルカリ高めにできあがること。

pH試験紙では10を超えている感じ?、pH指示薬(フェノールフタレイン)では明確にピンク(pH10.0以上)、使ってもあまりしっとり感がない。
リキッドに希釈するときに少量のクエン酸を加えて調整しています。

混じりもののない純石けんのpHは9.5~10.5なのでひょっとしたら本来の値の範囲なのかもしれませんが、せめて指示薬でピンクにならない程度に収めておきたいものです。


直接的な原因としては3つ考えられます。

1) KOHを入れ過ぎ
2) オイルの鹸化価を大きく見積もっている
3) 反応が完結しておらず、遊離アルカリが残存している

2)なら鹸化価の幅の平均値を使わずに小さい方を採用する、3)は加熱時間や熟成をしっかり行うことで対策が取れます。

1)は計算間違いや計り間違いがないとすれば購入した苛性カリの純度換算に問題がある可能性が考えられます。


薬局で取り寄せる苛性カリは日本薬局方グレードのもので、純度規格は「85%以上」です。
この苛性カリを鹸化に使う場合には純度が85%であるとして計算するのが一般的です。
(残りの15%ほどは水分と少々の炭酸カリです)

しかし純度規格「85%以上」の意味するところはぴったり85%ではなくて、「最低 85%であることを保証する」ということなのです。

バルクの化学品製造においてはこのような品質保証の仕方はごく普通です。私がの勤務先の化学メーカーでも、ユーザーへの品質保証値が98%以上の場合は製造規格が例えば98.5%以上におかれ、決して98%を下回ることがないように管理されています。(値はモノによって異なります)


では局法の苛性カリは実際どのくらいの純度なのでしょう?

実は過去にあるメーカーに問い合わせてみたことがあります。その回答は「保証値が85%以上で、実際には86~87%程度」ということでした。


例えば純度換算前のKOHが85g必要なレシピの場合、純度85%で計算・計量すると100gの局法苛性カリとなりますが、実際の純度が87%だったとしたら2g余分になるわけです。
ディスカウントしないレシピでは結構致命的・・・。
2gのKOHを中和するためには約2.3gのクエン酸が必要です。やはりかなりの量ですね。

次回から86%か87%で計算して様子を見てみようと思っています。


とまあ、思うだけではなんなので・・・



手元にある苛性カリの純度を自分で測れないかと中和滴定に挑戦してみました。

酸としては無水クエン酸(C6H8O7、MW=192.12)を使います。KOHはMW=56.1です。
指示薬は1%フェノールフタレインで、pH 10.0を境にピンク/無色に変化します。

中和反応の量論式

3KOH + C6H8O7 → C6H5O7K3 + 3H2O

つまりKOH 3分子(168.3g)と無水クエン酸 1分子(192.12g)が等量関係にあります。


以下、写真は3.0gの苛性カリを溶かした水溶液をクエン酸水溶液で中和していく様子です。
クエン酸水溶液は6.0gのクエン酸を精製水に溶かして119.6gにしたもの。つまり5.02%です。



△開始前。KOH水溶液は濃いピンク色です。ここに右のクエン酸水溶液を加えていきます。
およそ85%という純度が分かっているので、等量点に近くなるまでは流し込み、終点が近づいてきたらスポイトに切り替えます。


△クエン酸水溶液を58.8g加えたところ。ピンクは消えそうです。


△ひとつ前の写真に1滴加えただけで、色はなくなりました。


-----計算----------

苛性カリ 3.0gを中和するのに用いたクエン酸の量から苛性カリの純度が計算できます。

58.8g × (6.0/119.6) = 2.950g (クエン酸の量)

2.950g × (168.3/192.12) = 2.584g (クエン酸に等量のKOHの量)

2.584 ÷ 3.0 = 0.861 = 86.1% (苛性カリ中のKOH純度)

おお!
なんだかもっともらしい数字が出ました!!

しかし少々問題がありました。

今回は写真に写っているA&Dの秤、精度±0.1g(校正機能付き) のものを使ったのですが、この精度で数グラムの滴定を行うと誤差が大きすぎました。
この精度ではKOHの一粒の重さ、クエン酸水溶液1滴の重さを検知できないため、表示では3.0gの苛性カリを量ったつもりが実は2.9~3.1gの可能性があります。つまり重量で数%くらいの誤差があっても不思議ではないのです。
実際、3.0gの表示になってから数粒の苛性カリを足しても表示は変わりませんでした。

仮に上の計算式で、真の苛性カリ重量が2.9gだった場合は純度89.1%、3.1gだった場合は83.3%となり、全く再現性がありません。
さらにクエン酸を計量したときの誤差も加わります。
この精度の秤を使うなら苛性カリとしては10g以上でないと意味のある値は得られないようです。


参考のため、数量を変えて何度か測定と計算をしてみた結果をお見せします。全然ダメです。
苛性カリ重量クエン酸水溶液濃度と重量苛性カリ純度 計算値
1.0g9.96% 10.4g90.7%
2.0g9.96% 19.9g86.7%
2.5g5.02% 47.9g84.2%
3.0g5.02% 58.8g86.1%



もうひとつ微量モード付きのデリテックのキッチンスケールを持っているのですが、これは表示は0.1g単位だけど精度は±0.2g、さらに秤量皿の上で位置を変えたり一旦電源を切って量りなおしたりすると平気で0.2gくらい異なる数字を出してくるようなものなので話になりません。タニタにも同じ精度の秤がありますが、似たようなものでしょう。このレベルだと30gくらい必要だと思います。



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もうひと桁精度が高くてたくさん測れる精密天秤がほしいなぁ。
これ↓、異常に安いし日本のメーカーじゃないみたいなのだけど、どうだろう


↓ ご参考まで。
もっと小さいものがホームセンター(ヴィシーズやジョイフル本田)の実験器具コーナーで買えることもあります。
私は苛性カリを購入している薬局で一緒に取り寄せをお願いしました。

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コメント 4

mimi

ゆりくまさんって化学屋さんだったんですか・・・・・・・
すごい実験されてて びっくり!! (@0@)
さすがー ですね。ここまで K にねばるとは・・・・
でもほんと!ここまですると精密機械がほしくなるでしょうね?

石けんでもここまで、できるんですね。すごいです!
フェノール液 私も使ってみたくなりました。
   (たぶん使われることないでしょうが)
これからも楽しいreportおまちしています。
  尊敬するゆりくま様
by mimi (2010-09-30 09:38) 

ゆりくま

■mimiさん

理系で化学メーカーに勤めていますが化学嫌いのエンジニアです。

尊敬されると照れるなぁ・・・
by ゆりくま (2010-09-30 21:52) 

ウノDX

こんばんは!
先日の工作楽しかった~。ありがとうございました。
もし自分で余分なものの少ない液体石けん作ったら、
どれくらいクエン酸入れるといいのかな~
ゆりくままんにアドバイス聞いてみよ~と思って、
久しぶりにこちらのブログを見にきたら、
おお、ちょうどphの話だった。ためになった。
やっぱり・・・肌弱いので、市販品にしようかな。
市販品はそういう点ではいつも安定してるのが魅力・・・。
次回また色々教えてください。
釜焚き石けんOR炭遠赤で加熱石けんいつかやりましょー。笑
by ウノDX (2010-10-04 19:38) 

ゆりくま

■ウノさん

先日はどうも♪
pHは低けりゃいいってもんでもないので、上記のPP指示薬なんかはお手軽でいいと思います。
釜炊きはやったじゃん。炭火BBQ石けんは道具があれば&肉も忘れずに。
by ゆりくま (2010-10-04 23:56) 

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